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MMAの練習に音楽は有効?パフォーマンスへの影響を検証

MMAの練習で音楽はパフォーマンスを高めるのか。格闘技の試験、アデサニヤとシウバの習慣を比較し、気分の改善と測定できる成果の違いを解説します。

Oscar Nascimento
レビュー担当 AgentMMA Editorial Team
11 分で読めます
MMAの練習に音楽は有効?パフォーマンスへの影響を検証

結論

MMAのトレーニングで音楽を使うと、気分が良くなり、運動量が増える場合もあります。ただし、UFCでの勝率を高めることは示されていません。小規模なキックボクシングやテコンドーの試験では、選手が元気になったと感じても、身体的な成果は一貫していません。現時点で最も根拠があるのは、トレーニングやウォームアップの補助として使い、自分のパフォーマンスと照らし合わせて確かめる方法です。

イスラエル・アデサニヤのプレイリストやアンデウソン・シウバの入場曲を知ると、選手が音楽を大切にする理由が見えてきます。しかし、その体験談だけでは、曲によって打撃数がどれだけ増え、判断がどれだけ良くなり、何勝につながるのかは分かりません。

データの概要: 2020年のレビューは、運動・スポーツ分野の139研究、計3,599人を対象としています。本記事で取り上げる格闘技の試験は2023年、2024年、2026年に発表され、参加選手はそれぞれ20人、20人、12人でした。いずれもトレーニングのテストであり、UFCの試合結果を調べたものではありません。

音楽はトレーニング中の何を変えるのか?

準備が整ったと感じることと、実際のパフォーマンスが良くなることを分けて考えましょう。どちらも大切ですが、答えている問いは異なります。

ピーター・テリーらの2020年のメタ分析では、さまざまな活動において身体的パフォーマンスへの好影響が見られました。効果はスポーツ課題よりも運動課題で大きく、そのまま格闘技に当てはめられる範囲には限りがあります。

サンドバッグのドリルでは、あらかじめ決めた動作を繰り返せます。実際の対戦相手がいる場合は、いつ、どこを、そもそも攻撃するかを判断しなければなりません。前者に役立つ音楽が、後者の能力も高めるとは限りません。

きつさと運動量も分けて考える必要があります。楽に感じても、こなした量は変わらないことがあります。反対に、同じきつさでより多く動ける場合もあります。どちらの観察からも、守備の質を維持できたかどうかは分かりません。

MMAのコンディショニングでは、気分の高まり以外も記録することが大切です。正確にできた反復の回数を数え、フォームを確認し、その練習をどの程度きつく感じたかを残しましょう。良い気分になったことをすべて能力向上と呼ばず、それぞれを別の指標として扱ってください。

格闘技の研究では何が分かっているのか?

研究者がどんな音楽を流し、選手が何を行い、何が改善したのかを比べると、違いがよく分かります。以下の試験は、課題も参加者も異なります。

研究参加選手音楽の条件主な結果主な限界
ウエルギら、2023年テコンドー選手20人:男性10人、女性10人ウォームアップ中に毎分140拍または200拍の音楽を、60 dBまたは80 dBで再生毎分140拍・80 dBで、敏捷性と蹴りの成績が最も良かった同じクラブの若い選手が対象で、選んだ曲は一曲
ブジャブリら、2024年男性キックボクサー20人ウォームアップ中に好みの音楽と本人の映像によるフィードバックを併用試したすべての蹴り課題で、映像のみの条件や対照条件より蹴りの回数が多かった音楽だけの条件がなかった
ダ・シルバ・ドゥアルテら、2026年男性キックボクサー12人ウォームアップとサンドバッグのインターバル中に、自分で選んだ音楽を再生音楽を使った練習後に活力の自己評価が上がったが、打撃数と自覚的なきつさには統計的に有意な差がなかった標本が小さく、抵抗する相手がいなかった

これらは、同じ効果について相反する推定を示しているわけではありません。ウォームアップ中の音楽と運動中の音楽は異なり、複数の介入を組み合わせることと音楽だけを使うことも異なります。テコンドーの蹴りのテストは、キックボクシングのコンビネーションとも違います。

この表は音楽を試す理由にはなりますが、誰にでも当てはまる向上率を示すものではありません。参加者をひとまとめに集計すると、こうした違いが見えなくなってしまいます。

音楽で気分が良くなっても、打撃数は増えないことがある?

2026年のキックボクシング試験は、この二つを分けて調べています。ただし、気分に関する結果の読み取りには注意が必要です。

ジョナタス・デイヴィソン・レイス・ダ・シルバ・ドゥアルテらは、同じ選手を対象に、自分で選んだ音楽がある場合とない場合を比較しました。サンドバッグの課題は一ラウンド二分を三ラウンド行い、各ラウンドの中で20秒間の全力運動と20秒間の休息を交互に繰り返すものでした。

コンビネーションにはジャブ、ストレート、回し蹴りを使いました。研究者は、力より速さを重視するよう選手に指示し、記録された打撃の回数を数えました。

選手は、音楽を使った練習後に、より活動的で元気になったと報告しました。これは、音楽ありの条件の中で、練習前後を比べた変化です。

打撃数と自覚的な運動強度には、条件間で有意な差がありませんでした。選手の平均年齢は25.0歳でした。

この区別は、パンチ力への効果を論じる際に重要です。速い反復の回数を数えても、一発ごとのパンチの力を測ったことにはなりません。この実験では、パンチが強くなること、相手に対する命中精度が上がること、レスリングの持久力が高まることは確認されていません。

標本の大きさも重要です。十二人の選手だけでは、より大きな研究なら検出できる小さな効果を見逃す可能性があります。有意差がないからといって音楽がまったく役立たないと証明されたわけではありませんが、この試験で確認されなかった利点を主張することはできません。

格闘技の練習では、速い音楽ほど良いのか?

必ずしもそうではありません。テコンドーの試験は、そう決めつけずに実際に検証しました。

イブラヒム・ウエルギらは、10分間のウォームアップ中に、同じ曲のテンポと音量を変えました。毎分140拍と200拍を、それぞれ60 dBと80 dBで比較し、無音の条件も設けました。

毎分140拍・80 dBの条件は、敏捷性、短時間の蹴り、反復する蹴りのテストで最も良い成績を示しました。テンポを毎分200拍に上げても、最良の結果にはなりませんでした。

音楽はテスト前に止められていました。つまり、これは準備段階に関する根拠であり、毎回の蹴りを音楽の拍子が後押ししたという結果ではありません。

参加者は全員が同じクラブの黒帯で、日常的に音楽を聴くと回答していました。平均年齢は17.5歳です。こうした条件から、結果が当てはまるのは限定された集団です。

この結果を、MMAのトレーニングに普遍的な最適BPMがあるという話に置き換えることはできません。実験で調べたのは、特定の設定で流した一曲です。あらゆるジャンル、テンポ、プロ選手の個人的なプレイリストを比較したわけではありません。

音量についても同じ注意が必要です。報告された80 dBは研究の条件であり、推奨されるリスニング音量ではありません。ジムの音を大きくすることは、実際の練習成果が良くなったかを確かめる代わりにはなりません。

MMAの練習に音楽は有効?パフォーマンスへの影響を検証

最も効果が大きく見える結果から、音楽だけの効果を切り分けられないのはなぜ?

2024年のキックボクシング研究では、音楽と映像によるフィードバックを組み合わせていたためです。

マナール・ブジャブリらは、通常のウォームアップ、映像によるフィードバックのみ、映像によるフィードバックと好みの音楽の併用を比較しました。フィードバックがある条件では、選手は自分の技術を映した映像を見ました。

併用条件では、試した課題全体で蹴りの回数が増えました。また、映像のみの条件や対照条件よりも、気分の評価が良くなりました。

これは、その映像を使った練習手順に音楽を加えることを支持する結果です。ただし、音楽だけの条件を設けていないため、音楽のみを使う場合と通常のウォームアップを比べたらどうなるかは分かりません。

これはトレーニング関連の見出しでよく起こる問題です。技術へのフィードバックと音楽が一組になっている場合、改善のすべてをプレイリストのおかげとすることはできません。

また、この結果は技能の向上が長く続くことを示すものでもありません。ウォームアップ後のテストであり、ファイトキャンプを通して選手の技術が向上し、その状態を維持できたという根拠ではありません。その場の運動量と長期的な成長には、異なる測定が必要です。

アデサニヤとシウバの話から、試合と音楽について何が分かる?

音楽の選び方が、いかに個人的なものかが分かります。

イスラエル・アデサニヤは、2022年のUFC 276後、レスリング練習の終盤にWWEのテーマ曲を使っていると語りました。MMA Fightingは、ジ・アンダーテイカーに着想を得た入場演出の背景にあるプレイリストについて、本人の説明を報じました。

アンデウソン・シウバは2021年、DMXの音楽が自分の人生の一部になり、ケージに入る前に奮い立たせてくれるとMMA Fightingに語りました。

どちらも動機づけや音楽の持つ意味についての話です。同じ条件をそろえ、音楽がある練習とない練習で本人の成果を比較したものではありません。

そのため、アデサニヤの選曲をそのまままねても、役立つ問いを見落とします。その曲は、自分が実際に行っている練習のパフォーマンスを助けるのか、という問いです。シウバと曲との個人的なつながりも、再生ボタンを押すだけで自分に移るわけではありません。

UFCの入場曲とMMAのワークアウト用音楽は、目的も異なります。入場は短時間で観客に見せる場面ですが、練習用のプレイリストは反復ドリルの間ずっと流れることがあります。一方の場面の根拠を、もう一方の証明として扱うべきではありません。

実用面で控えめに言えるのは、慣れ親しんだ曲が課題に集中する助けになるなら、使い続ける価値はあるということです。勝つ確率が上がるとまで主張する必要はありません。

MMAの練習用プレイリストを、無理なく検証するには?

再現しやすいドリルを使い、何をもって改善とするかを開始前に決めましょう。これは実用的な比較方法であり、試合結果を良くすることが証明された手順ではありません。

  • ドリル、運動時間、休息時間、用具を同じにします。
  • 最も元気な日に必ず音楽をかけるのではなく、音楽ありとなしの練習の順番を変えて比較します。
  • 正確にこなせた量、技術の質、自覚的なきつさを別々に記録します。
  • 睡眠、直前のトレーニング、課題の変更点を書き留めます。
  • 一度だけ特に調子が良かった練習を信じるのではなく、比較を繰り返します。

パンチを小さくして回数を増やした場合、数値は良くなっても技術は悪くなるかもしれません。まず有効な一回の基準を決め、コーチや映像確認を使って、その基準を一貫して適用しましょう。

練習の目的を支える音楽を選び、指導や停止の合図が聞こえる音量にしてください。技術練習の妨げになるなら、その課題では音楽を外しましょう。

音楽によってコンディショニングが楽しくなっても、運動量は変わらないことがあります。その場合は好みや快適さの面での利点として記録し、心肺能力、回復、KOパワーが改善したと言い換えないようにしましょう。

このデータはどの程度確かなのか?

根拠は、MMAの試合よりも短時間のトレーニング反応についてのほうが充実しています。本記事は公表された実験を比較するものであり、AgentMMAが試合結果を独自に調査した研究の報告ではありません。

クロスオーバー試験では、同じ選手が複数の条件を試し、自分自身を比較対象にできる利点があります。それでも少人数では推定の不確かさが残ります。また、参加者は音楽が流れているかどうかを知っているため、期待が反応に影響する可能性があります。

取り上げた格闘技の試験は、若い選手、管理されたドリル、短時間の実施を対象としています。UFCでの勝利、一本を防ぐ能力、打撃を受ける状況での判断、シーズン全体での成長は測っていません。

2024年の研究では、映像から音楽の効果を切り分けられません。2026年の研究では、小さな変化を検出する力が不足していた可能性があります。2023年の研究は、選ばれた一曲と単一クラブの参加者を対象にしており、テンポに関する結果を広く当てはめることには限界があります。

選手のインタビューは背景を理解する材料であり、実験的な証拠ではありません。アデサニヤとシウバの話は音楽の魅力を説明してくれますが、欠けている比較を補うことはできません。

よくある質問

音楽はMMAのパフォーマンスを高める?

音楽は気分や一部のトレーニングテストの成績を良くすることがありますが、格闘技の研究結果は一貫していません。ここで取り上げた研究は、MMAの試合結果の改善やUFCでの勝率向上を示していません。

MMAの練習に最適なBPMは?

MMAに最適なBPMは確立されていません。選手20人を対象にしたテコンドーの試験では、毎分140拍・80 dBが、比較したほかの設定より良い結果でした。ただし、これで全選手に理想的なプレイリストが決まるわけではありません。

音楽を聴くとパンチが強くなる?

本記事で検討した根拠からは、パンチが強くなるとは確認できません。キックボクサー12人の研究はサンドバッグ練習の打撃数を数えましたが、音楽による有意な増加は見られませんでした。打撃数とパンチの力は、別の測定項目です。

試合前とトレーニング中、どちらで音楽を使うべき?

それぞれ分けて試しましょう。ウォームアップの研究は音楽を止めた後の変化を調べますが、トレーニングの研究では運動中ずっと音楽を流すことがあります。指導を妨げず、その課題を支える習慣を選んでください。どちらの使い方も、試合結果の改善を保証するものではありません。

出典と参考資料

この記事の根拠となるデータと公開資料です。

  1. Terry et al. (2020): Effects of music in exercise and sport (pubmed.ncbi.nlm.nih.gov)
  2. Ouergui et al. (2023): Warm-up music tempo and loudness in taekwondo (journals.plos.org)
  3. Boujabli et al. (2024): Preferred music and video feedback in kickboxers (pmc.ncbi.nlm.nih.gov)
  4. Da Silva Duarte et al. (2026): Self-selected music and kickboxing performance (link.springer.com)
  5. MMA Fighting: Adesanya explains his training playlist and UFC 276 entrance (www.mmafighting.com)
  6. MMA Fighting: Anderson Silva explains his connection to DMX (www.mmafighting.com)

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